「飛騨産業って、キツツキのマークのところですよね?」——ご来店のお客様から、いちばんよく出てくる第一声がこれです。名前より先にマークを覚えている方が多い。それだけ長く、日本の家庭に入ってきたメーカーだということでもあります。
ただ、そこから先——何が得意で、他の国産メーカーと何が違うのか——となると、意外と説明されていません。森のことばとSEOTO、名前は聞くけれど中身の違いがわからない、という声もよく伺います。
この記事では、1957年創業の家具専門店として国産家具を長年扱ってきた立場から、飛騨産業という会社の成り立ちと技術、そして選ぶときに見るべきところを整理してお伝えします。
1. 飛騨産業とは — 1920年、岐阜県高山市で始まった会社
飛騨産業は、1920年(大正9年)8月に岐阜県高山市で創業した家具メーカーです。公式の沿革では「中央木工株式会社」の設立総会がその出発点として記されています。所在地は現在も岐阜県高山市漆垣内町。100年以上、同じ土地でものをつくり続けている日本のメーカーです。
ブランド表記は「HIDA」、そして木を叩くキツツキのマーク。このマークの印象が強いのは、それだけ長い時間、変わらず使われてきたからでしょう。
出発点は「使われていなかった木」だった
ここが、この会社を理解するうえでいちばん大事なところだと思っています。飛騨産業が最初に目をつけたのは、当時活用されていなかったブナ材でした。今でこそ家具材として普通に使われますが、当時はそうではなかった。
その「余っている木」を、「飛騨の匠」と呼ばれる地域の伝統技術を土台にして、西洋の曲木椅子づくりの手法で製品に変えていった。つまりこの会社は、誰も使っていない木を、どうにか価値のあるものにするという発想から始まっているわけです。
後で触れるスギの圧縮技術も、同じ発想の延長線上にあります。100年前も今も、やっていることの芯は変わっていない。この一貫性が、飛騨産業のいちばんの個性だと考えています。
現在の事業は家具の製造販売にとどまらず、自然エネルギー発電・林業・製材業にまで広がっています。資本金は1億円。木を使う会社が、木を育てるところまで手を伸ばしている——という構図です。
2. 曲木 — 5種類の技法を使い分ける、100年分の蓄積
曲木とは、無垢の木材を蒸して、曲げる技法です。切って削って曲線をつくるのではなく、木そのものを曲げる。切削だと木目が途中で切れてしまいますが、曲木なら木目が曲線に沿って流れます。強度の面でも、見た目の面でも、これは大きな違いです。
ひとつの技法ではなく、5種類
飛騨産業がおもしろいのは、曲木をひとつの技術として持っているのではなく、公式に5種類の技法を、材料と形状によって使い分けている点です。
- 大輪踏み曲げ
- 手曲げ
- 熱盤プレス曲げ
- プレス曲げ
- 電気釜曲げ
木は工業製品ではありません。同じ樹種でも一本ずつ性質が違い、曲げたい角度や部材の太さによって、うまくいく方法が変わってきます。5つの引き出しを持っているということは、それだけ多くの失敗を経てきたということでもあります。100年という時間の重みが、いちばん形になって表れているのがこの部分です。
お客様には「なぜこの椅子の背もたれはこんなに滑らかなのか」とよく聞かれますが、答えはここにあります。削り出した曲線と、曲げた曲線は、手で触ると違いがわかります。
3. もうひとつの技術 — 軟らかいスギを、硬くする
曲木と並んで、飛騨産業を語るうえで欠かせないのが圧縮技術です。
スギは日本にたくさんある木ですが、家具材としては長らく敬遠されてきました。理由は単純で、軟らかく、キズがつきやすいから。テーブルにすれば、お皿を置いただけで跡が残りかねません。
加熱して、圧縮して、硬くする
飛騨産業はこのスギを加熱圧縮して硬度を高める技術を確立しました。しかも、圧縮と曲げを同時に行うこともできる。「軟らかいから曲げやすいが、軟らかいから家具にならない」というジレンマを、真正面から解いたわけです。
特筆すべきは「スギ圧縮柾目材」が薬剤を使わずに形状を保持する点です。薬剤で固めるのではなく、木そのものの性質を変えて形を保つ。この技術はKISARAGIというシリーズに応用されています。
飛騨産業は2001年からスギの家具材活用を研究し、2013年には「きつつき森の研究所」を設立しています。10年以上かけて研究を続け、専門の研究所まで立ち上げた——という順番を知ると、この技術の位置づけが見えてくると思います。
そしてこれは、100年前にブナでやったことと、構造がまったく同じです。使われていない木に、使い道をつくる。会社の芯が変わっていないというのは、こういうことです。
4. 代表シリーズと、失敗しない選び方
公式に展開されている代表シリーズ
- 森のことば
- SEOTO / SEOTO-EX
- KISARAGI(スギ圧縮技術を応用)
- cobrina
- suginari
- kei
- SUWARI(座り)
- SHINRA(森羅)
なお飛騨産業は、2021年度グッドデザイン賞・2022年度グッドデザイン賞、そしてウッドデザイン賞2021を受賞しています。
1. カタログで比べず、座って比べる
飛騨産業の椅子は、シリーズごとに座り心地の性格がはっきり違います。そしてこれは、写真では絶対にわかりません。座面の角度、背の当たり方、肘の高さ——数値で並べても、体が感じるものとは別物です。ダイニングチェアは1日に何度も座るものですから、ここは実物で確かめていただきたいところです。
2. 樹種と塗装で、印象は別物になる
同じシリーズでも、樹種と塗装色が変われば部屋での見え方は大きく変わります。しかも無垢材は経年で色が深まっていくので、「10年後にどう見えるか」まで含めて選ぶのが本来です。この判断は、実物のサンプルを前にしないと難しいものです。
3. テーブルと椅子は、同時に決めなくていい
よくあるご相談が「セットで買わないとダメですか」というもの。そんなことはありません。むしろテーブルの天板高さに対して、自分の体に合う椅子を選ぶほうが、暮らしは快適になります。飛騨産業はシリーズが豊富なので、組み合わせの幅が広いのも利点です。
中津家具では、搬入経路の確認から納品後のメンテナンスまで一貫してご相談を承っています。価格はモデル・樹種・塗装によって異なりますので、個別にお見積もりいたします。
5. 中津家具で 飛騨産業 を選ぶメリット
中津家具は1957年創業の家具専門店として、国内メーカーの確かなブランドを長年取り扱ってまいりました。飛騨産業 についても、モデル選び・素材/仕上げの選定から搬入経路・納期のご確認まで一貫してサポートいたします。
- 東京事務所(青山・予約制)で、ご検討モデルについてご相談いただけます
- 中津本店(大分)では、実際の現物をご覧いただけるアイテムがある時期もあります
- 張地・素材・サイズ選びから、搬入経路・納期のご確認まで一貫してサポートします
- 納品後の経年メンテナンス・お手入れのご相談にも対応します
▶ 飛騨産業 の価格・納期を問い合わせる(無料・2営業日以内に回答)
よくあるご質問
Q. 飛騨産業はどこの国のメーカーですか?
A. 日本のメーカーです。1920年(大正9年)8月に岐阜県高山市で創業し、現在も岐阜県高山市漆垣内町に所在しています。ブランド表記は「HIDA」、キツツキのマークで知られています。
Q. 飛騨産業の「曲木」とはどんな技術ですか?
A. 無垢の木材を蒸して曲げる技法です。切削で曲線をつくるのと違い、木目が曲線に沿って流れるため、見た目にも強度の面でも違いが出ます。飛騨産業は公式に5種類の技法(大輪踏み曲げ・手曲げ・熱盤プレス曲げ・プレス曲げ・電気釜曲げ)を持ち、材料と形状によって使い分けています。創業時、当時活用されていなかったブナ材に着目し、「飛騨の匠」の伝統技術を基に西洋の曲木椅子づくりから出発したのが始まりです。
Q. 飛騨産業にはどんなシリーズがありますか?
A. 公式に展開されている代表シリーズとして、森のことば、SEOTO、SEOTO-EX、KISARAGI、cobrina、suginari、kei、SUWARI(座り)、SHINRA(森羅)などがあります。シリーズごとに樹種・デザイン・座り心地の性格が異なりますので、実際に座って比べていただくのが確実です。
Q. 飛騨産業のスギの家具は、キズがつきやすくないですか?
A. スギは本来軟らかくキズつきやすい木ですが、飛騨産業は加熱圧縮によって硬度を高める技術を確立しています。圧縮と曲げの同時加工も可能で、「スギ圧縮柾目材」は薬剤を使わずに形状を保持します。この技術はKISARAGIに応用されています。同社は2001年からスギの家具材活用を研究し、2013年には「きつつき森の研究所」を設立しています。
Q. 中津家具で 飛騨産業 を購入できますか?
A. はい。中津家具は1957年創業の家具専門店として、飛騨産業 を取り扱っております。森のことば・SEOTO をはじめ、モデル選び・素材や仕上げの選定から搬入経路・納期のご確認まで、経験豊富なスタッフがご相談を承ります。