座面が沈んできた。ペーパーコードがささくれてきた。塗装の色が抜けて、輪じみが残っている。— Yチェア(CH24)は、手入れをすれば何十年も使える椅子です。ただし座面と塗装は消耗品で、いつかは手を入れる時期が来ます。中津家具では、年間300脚以上のYチェアのペーパーコード張替を手がけています。この記事では、実際の作業をそのままご覧いただきます。
年間300脚以上、という数字について
1年で300脚。1日1脚以上のペースです。同じ椅子を毎日のように扱っていると、傷み方に傾向があることが分かってきます。
- 座面がへたるのは、いつも座る人の体重がかかる前寄りから
- ささくれは角の折り返しから始まることが多い
- 塗装の色抜けは肘掛けと背の上端、手が触れるところから
数をこなしていると、写真を見ただけで「これは座面だけで足りる」「これはフレームから直したほうがいい」の見当がつきます。お客様に余計な工程をお勧めせずに済むのは、この積み重ねによるものです。
どんな状態なら直せるのか
| 症状 | 対応 |
|---|---|
| 座面が沈む・たわむ | ペーパーコードの張り替えで戻ります。もっとも多いご相談です |
| ペーパーコードのささくれ・切れ | 同じく張り替えです。部分的な補修ではなく、編み直しになります |
| 塗装の色抜け・輪じみ・毛羽立ち | 塗装を落として研磨し、仕上げ直します |
| 接合部のぐらつき | 組み直しで対応できる場合があります。状態により判断します |
| 脚の欠け・割れ | 程度によります。まず写真をお送りください |
| 座面と塗装の両方 | 座面を外した状態が、いちばん塗装をきれいに直せるタイミングです |
Yチェアはペーパーコードを外すとフレームだけになる構造です。座面を張り替えるときは、フレームの塗装を直す絶好の機会でもあります。両方まとめて手を入れると、見違えます。
実際の作業をご覧ください
下は、当店の工房でYチェアのフレームを研磨しているところです。ペーパーコードはすでに外してあります。
写真の色の差に注目してください。飴色に見えるところが長年の塗装、白く見えるところが研磨して現れた木地です。この境目がなくなるまで、脚の一本ずつ、貫の一本ずつを削っていきます。曲線の多い椅子ですので、機械で一気に、というわけにはいきません。
派手な作業ではありません。地味に、一本ずつ。ただ、この工程を丁寧にやるかどうかで、仕上げの塗装の乗りが変わります。
ペーパーコードの張り替えについて
Yチェアの座面は、紙をより合わせたペーパーコードを職人が手で編んで作られています。機械では編めません。1脚を編み上げるのに、まとまった時間がかかります。
当社グループでは、本場デンマークの職人より直接指導を受けた専門職人が、純正のペーパーコードを使って一脚ずつ張り替えています。
張り替えの際は、古いコードをすべて外し、フレームの状態を確認してから、新しいコードで編み直します。部分的な継ぎ足しはいたしません。編み目のテンションが変わってしまい、そこからまた傷むためです。
他店でお求めのYチェアも承ります
中津家具でお買い上げいただいた椅子でなくても構いません。ご購入先を問わず、修理のご相談をお受けしています。
実際、お持ち込みいただくYチェアの多くは、他店やご実家から受け継がれたものです。「もう20年使っている」「親が買ったものを引き継いだ」というご相談も少なくありません。直して使い続けられる椅子だからこそ、そうしたご相談が集まります。
他店でお求めの家具全般の対応については、他店で買った家具もメンテナンスします もご覧ください。
費用と期間について
ペーパーコードの張替については、当社グループの北欧家具専門サイトに料金とお申し込みの流れを掲載しています。 Yチェア ペーパーコード張替(北欧家具.com) をご覧ください。
塗装のやり直しや、接合部のぐらつきなど座面以外もあわせてご相談の場合は、状態によって変わりますのでお見積もりでご案内しております。
ご相談の際は、次の3つをお知らせいただけますと、こちらの判断が早くなります。
- 椅子全体の写真(正面と、斜め上から)
- 気になっている箇所のアップ(座面のたわみ、ささくれ、塗装の傷みなど)
- 脚数(ダイニングで4脚まとめて、というご相談も多くいただきます)
写真を拝見した時点で、座面だけで足りるのか、塗装も直したほうがよいのかの見当をお伝えできます。
よくあるご質問
| ご質問 | お答え |
|---|---|
| リプロダクト品でも直せますか | まず写真をお送りください。構造によってはお受けできない場合がございます |
| 座面の色は選べますか | ペーパーコードには色の種類がございます。ご相談時にご案内します |
| 何脚からお願いできますか | 1脚から承ります |
| 遠方ですが対応できますか | 全国からご相談をいただいております。配送方法を含めてご案内します |
| Yチェア以外のペーパーコードの椅子は | お受けできる場合がございます。写真でご相談ください |
直して使う、という選択について
Yチェアは1949年にハンス・J・ウェグナーがデザインし、カール・ハンセン&サンが今も一脚ずつ作り続けている椅子です。70年以上、同じかたちで作られ続けているということは、それだけ直しながら使う前提のものだということでもあります。
座面がへたったから買い替える、ではなく、編み直してまた10年、20年。そういう使い方ができる椅子は、そう多くありません。
Yチェアそのものについては カール・ハンセン Yチェア(CH24)完全ガイド に詳しくまとめております。あわせてご覧ください。